Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「まだ、何か話しが……?」

 早くお前も帰れ。

 言葉の外に、思いっきり滲ませても、こいつには効かない。

 そうこうしているうちに、生徒が飛び込んで来た。

「鈴木さん……! 大丈夫ですか!」

 小さく叫び声を上げて、小鳥のように飛んで来たのは、昨日、話を聞いた篠田だった。

 彼女は、ベッドに横になっている僕に、体当たりするように、抱きついた。

 そして、そのまま、しくしくと泣き出す。

「さっき、鈴木さんが朝礼台から落ちるのを見て、ヒナが教室に帰る前に、どうしても保健室によるって」

 やけに、冷静な声だった。

 出入り口を見れば、もう一人の少女、大槻凛花が、今度も篠田に付き添っていた。
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