Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 この状況で、何か良からぬ事ができるなら、やってみろ。

 胸の内で、こっそり毒づくと、適当な理由を付けて、一人、保健室を出た。

 ……逃げたワケではないぞ。

 ああ、そうとも。

 決して逃げたワケでは……そうそう、休憩のつもりだったのだ。


 もうすぐ今日、最後の授業が終わるようだった。

 どこか休める、人気の無い場所を探していた。

 すると、裏庭で不思議な光景を、見た。



 花が咲き乱れた花壇の中で、少女がふっと、立ち上がったのだ。

 大きな優しい瞳。

 白く透き通った肌。


 赤い花のような唇。

 長い髪はふわりと風に舞い。

 妖精の翼のようだった。

 
 なんて……キレイだ。

 その光景に、僕は、思わず見とれてしまった。

 僕の屋敷に掛かっている絵の少女。

 いや。

 それ以上に美しく儚い……現実の少女だった。
 
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