Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 ……誰だ? 

 なんていう名前だろう。

 思わず、裏庭に続く渡り廊下に近づいて、行ったとき。

 少女は仲間に呼ばれて、手を振った。

「凛花~~ボールはぁ」

「あったわよ。でも、髪留めとれちゃった。
 ちょっと待っててね」

 !

 りんか。


 大槻凛花か。

 なんて事だ。

 あいつがこんなに綺麗だったなんて。

 まるで花だ。

 名前の通りに、美しく、凛とした花…………

 駆けて行く後ろ姿を呆然と眺めていると、あら、まあ、と声を掛けられた。

「何を見ているんですか?」

「……花を」


 半分夢見ごこちでぼんやり答えてから、はっ、と声の主に気がついた。


「鈴木さんは、花がお好きですか?」

 傍らを見れば、校長だ。

 違うとも言えずに、曖昧に頷くと、校長は、嬉しそうに、笑った。
 
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