Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
Ⅴ章
襲撃
『……子! 皇子!「悪意」が来ます! 』
「……千……里?」
いつの間にか、眠っていたらしい。
少し横になっているだけのつもりだったのに。
耳元の、切羽詰まった千里の声で目が覚めた。
「悪意……?」
殺してやろう、と言う殺気だったら、僕にだって、寝ていてもわかったはずだ。
遠くに居る魔鏡千里に警告される前に。
ぼんやりした頭に、突き刺さる声は、更に続く。
『早く起きてください! すごい勢いで近づいて来ます! 距離、8、7、6、5……!』
「……!」
カウントが、速い。
人間が全速力で走る速さより、もっと。
頭より、体の方が早く動いた。