Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「吸血鬼……なのか……?」

 僕は、つぶやいた。

 口が乾いて、図らずも、声がかすれた。

「……仲間か……?」

 仲間なのか?

 何百年も待ち望んでいた仲間なのか。

 僕が知っているのは、育ててくれた爺と、絵の少女しか知らない。

 コイツは、その誰とも似てなかった。

 僕を含めてこんなに背が莫迦高く、筋肉の鎧に身を覆った者はいない。

 何よりも、遮光処置をしているようにはとても思えない服を着て、昼間に動けることが、不思議だった。

 吸血鬼ならば、陽の光に、少なからずダメージを負うはずなのに。

 しかし、爪が。

 身のこなしが。

 明らかに、人間とは違う。

 こんなに人間とは違う風貌を持つコイツを、他に表現するすべを僕は、持たなかった。




 吸血鬼、と以外に。




 僕の戸惑いを、男はげらげらと笑い飛ばした。
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