Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 男は、げらげらと笑うと、来た時と同じように唐突に、部屋から出て行った。

 くっそ……!

 何者なんだ、アイツは!

「千里……!」

 囁くと、魔鏡が、打てば響くように言葉を返す。

『すみません! 私に一度も写った事のないモノは追えません……悪意も殺気も消えました!』

 ……力が、抜けた。

 左肩が焼け付くように痛む。

「何が、起きたんだ……? 鈴木さん!」

 松嶋先生が、叫んだ。

 そんなの、僕の方が、知りたかった。

 僕は、今までかばっていた女をできる限り静かに下ろすと、声を絞り出した。

「松嶋……先生! 救急車を!」

 女の体温が、急速に冷えてゆく。

 下手をすると持たないかもしれない。

「あんたも、大怪我してるじゃないか! それに、その右手……!」

 ……爪を、見たか。

「……右手は…無事です……」 
 
 一瞬で爪を引っ込めた手を改めて見せると、松嶋を追い出した。

「早く!」

 僕の声に、松嶋先生は、はじかれるように出て行った。



 
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