夢の跡
「なあ」


僕の呼びかけに佑太が振り向く。


「卓海はきっと帰ってくる、僕をバカにして笑いに、必ず帰ってくる──そんな気がするんだ」


佑太は目を眇めた。

僕の逃避様に呆れたのかもしれない。

手を合わせて黙祷している僕に、佑太が呟く。


「『帰ってくる』って、思いたいだけだろ」

「それでもいい、僕は卓海を待ち続ける。誰が卓海を忘れていっても、僕だけは……」

「何でそうまでこだわるんだよ? ただ話したぐらいなのに……」


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