夢の跡
「ち、違うよ」

「好きなんでしょ。素直にそう言ったらいいじゃん」

「違うって。……声、小さくしてくれる?」


クックと声を殺して笑っているのが、僕は何だか悔しかった。

僕は卓海のことなんてほとんど知らないのに、
卓海の方はまるで、僕を掌中に収めたかのように感じられて。



──卓海とは中学に入ってから出会った。


三年の現在までを一緒に過ごしてきたけど、
僕も卓海も別々の仲間と行動しているから、授業中か休み時間の付き合いでしかない。


だから卓海が何を考えているのか読めなかったし、
知ろうと思ってもできなかった。


「何で加藤が好きなの?」
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