夢の跡
不意に、今朝見た夢を思い出した。


「夢見た、……卓海の」


母がシート越しに、後部座席の僕を振り返った。


「卓海って? 同級生の?」

「うん。全然変わってなかった」


当たり前だ、変わるはずなんてない。


『夢で卓海に会った』

という幼稚な発言に、


「そう。入学式だから、会いに来てくれたのかもね」


珍しく母は穏やかな対応をした。


「うん……」
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