君を






「こっっの馬鹿っっっ」



頬を殴られた。拳骨で。
殴られた右頬と口の中が熱い。

これだけ痛いってことは、拳も相当の痛みだろう。
下手したら皮くらい剥けるんじゃ。

と、一応女子なので心配してやる。

「あんたすなお殺す気!?」



春兎に押さえ付けられた羽夏が喚き散らす。

「すなおの気持ち分かってるくせにっっ」

気持ち?

そんなもの、アイツは話さない。

怯えるばかりで遅々として会話は進まない。




追い込んだ事実を棚に上げて毒吐く。



「羽夏っ抑えて。姫んとこいったげな」

押さえ付けるのが遅く、一発殴らせたのはわざとな、春兎が落ち着かせるように、肩を抱いて囁く。



あまりの憤りに、言葉が出ないらしい羽夏は鋭くオレを睨みつけると荒らしくドアを閉めて部屋を出て行く。




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