君を

6

置いていた手に透尚の手が被さる。
冷たくひんやりとした細い指だった。

『ぁ、ありがとう。ゎ、私のせいで、仲、悪くならないでね…』
たどたどしい小さな声。
いつもの吃音のせいでは無く、声が震えているように感じるのは気のせい?


『透尚のせいじゃないしっ心配しないでっ仲なんて元々良くないしっ』
心配しないで。
貴方が心痛める事が少なければと、それだけが願い。


透尚の下がった口角と哀しそうにいつも遠くを見る瞳。
それを笑顔にしていたあいつは今はいない。
ちらりと春を見るとしっかりしろと見てくる。
分かっている。
透尚は私達の大切な友達だ。
でも永久は『切石』の跡取りなのだ。
全ては永久が決め、私達は従うだけ。
永久が記憶を取り戻さずに透尚を切り離すと言ったら、従うだけ。


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