アマテラス!

「……帰らせてください」



とにかくこんな奇妙な状況を脱出しよう。
踵を返し歩き出す。
だが一向に進まない、というか、誰か服の裾を引っ張ってやがる。



「おい……ガキ」

「なあに?」

「なあにじゃねぇ離しやがれ!」



ガキは宙に浮いたまま、丈の短い羽織の裾を小さな手で掴んでいる。
こちらも全力で前に進もうとするがビクともしない。
なんて馬鹿力だ。



「だーッ!! 離しやがれってんだ! ジジイと一緒になって何企んでんのか知らねぇが流れが全く見えねぇんだよ! 流れが!」

「もうッ! ホント聞き分けないんだから天照は。あんまり言うこと聞かないんなら……」



ガキは尚も逃げようともがくオレを不意に離す。
勢い余って前につんのめるが、とりあえず体勢を立て直しそのまま鳥居に向かって駆け出す。



『天照、地に臥せろ!』



ガキの声が聞こえたと思った瞬間だった。
オレの身体に何か衝撃が走ったと思うと、次の瞬間オレは砂利の上を勢いよくスライディングしていた。



ズザーッという快音。
顔面が地面に擦れる。



「いってぇーッ!!」

「これで分かった? この旅は避けられないんだよ」



頭上で声がする。
いつの間に移動したのか、ガキは俯せになったオレの背中を足で踏みつけていた。
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