アマテラス!
「ガキ! 退けよ…ってか今オレに何しやがった!?」
ガキは悠々とオレの背に尻を乗せながらさも楽しそうに答える。
「おじいちゃんから聞いてないの? この言祝神社は詩や学問……つまり言葉に関するものの神社なんだよ。天照はどっちもさっぱりだけどね~」
うるせぇな。
ガキに言われたかねぇ。
「人間や動物、植物や石、水にまで精霊、いわゆる魂が宿るように言葉にも魂は宿るんだよ。“言霊”っていうんだ。ボクはその言霊を操る神様なんだ」
だから何なんだその神様ってのは。
そんなの信じる訳ねぇだろ常識的に考えて。
「んー……まぁ、信じるか信じないかは天照次第だけどね、とりあえず天照はボクに逆らえないってことだけは分かったでしょ? 今も動けないだろうし」
おいおいまた心読まれてるよ。
だがガキの言う通り、オレは今地面にべったり張り付いて動けない。
まるで四肢に鉄の枷でも嵌めたかのようにずっしりと地面に縫い付けられている。
「天照がボクと一緒に来るっていうのならこれ解除してあげてもいいよ」
裏を返せば断ったらずっとこのままって訳か。
選択権を与えている様でその実選択の余地がねぇじゃねぇか。
見た目は愛らしいがなかなか腹黒い幼児だ。
「あー……分かった。その“信仰を取り戻すための旅”とやらに出ればいいんだろ? 分かったから早く立たせろよ」
その場逃れのいい加減な台詞。
とにもかくにもこのガキの妙な呪縛から逃れるのが先決だ。
「そんな言い方じゃイヤー」
「ああ!?」
ガキが背中の上を離れ、地に伏せるオレの前にフワリと降り立つ。
そして天使のような満面の笑みを浮かべてこうほざきやがった。
「ちゃんと“お願い”してくれないとヤダもん」