アマテラス!
壱の段
「……今日も空っぽ」
空も山も橙に染まる夕暮れどき、賽銭箱を覗くのはオレの日課。
今日もくすんだ木製の賽銭箱は空だった。
昨日も空。
一昨日も空。
その前には飴玉がひとつだけ入っていた。
多分近所の婆さんが気紛れにポイと放り込んだのだろう。
ふざけんな飴玉ひとつで食っていけるわけないだろう。
舐めるのは飴ちゃんだけにしとけ。
「……今日もまともな飯にありつける気はしねぇな」
オレは方を落として賽銭箱の前を離れ、すごすごと母屋の方に向かう。
ここ数年はずっとこんな調子だ。
頭上で烏がアホウと啼いた。
阿呆と言いたいのはこっちだ。