ぼくたちは一生懸命な恋をしている
胸がいっぱいの私とは対照的に、スーツ姿の駿河くんはリラックスしてて、ネクタイをゆるめながらキッチンをのぞきこんでくる。少しあらわになった首元が綺麗すぎて、ドキッとして慌てて目をそらした。

「今夜は何を作ってくれたの?」

「えっとね、ビーフシチューとオムライスだよ」

「俺の大好物だ!はやく食べたいな」

あぁ、大人になってもこういうときの笑い方は昔と変わらない。無邪気で可愛い。かっこよくて可愛くて……もう心臓がもたないよ!だから、このお家が二人だけのものじゃないことが救いだったりする。

「すぐ準備するね。そろそろかなでも帰ってくると思うし」

「かなで、まだ帰ってないの?仕事?」

「ううん。新しいゲームを買いに行ってるだけ。最近は土日しかお仕事しないみたい」

ウワサしてたら、ちょうど玄関から物音が。

「腹減ったー!あいり、メシ!」

「かなでったら、ただいまが先でしょ」

お行儀の悪さが目にあまって注意するけど、たぶん効果はない。

「ただいま、メシ食わせろ!」

元気にリビングへ飛びこんできたかなでは、私の双子のお兄ちゃん。王子様みたいな見た目なのに中身はやんちゃな大型犬みたい。にぎやかで、自然と肩の力が抜ける。

「相変わらずだな、かなでは。あいちゃんのおいしいオムライスが食べたかったら、まず手を洗ってうがいをしてきなさい」

「オムライス!オレのは大盛りで!」

目を輝かせて洗面所へ駆けていったかなでに、私と駿河くんは顔を見合わせて笑った。

私たち兄妹と、駿河くん。三人で一緒に暮らすことになるまでには、いろんな出来事があった。
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