ぼくたちは一生懸命な恋をしている
15.隼
やってきましたよ、この日が!
待ちわびたよね、いろんな意味で。謎の組み合わせ、もとい、あいりちゃん親衛隊のみなさんと、楽しい旅行へいざ出発だ。
最初に提案されたときには、お腹を抱えて笑っちゃったよ。マリアさんと丈司さんと、まさか駿河君までが俺たちと一緒に旅行しようだなんて。俺からしてみれば、地獄絵図だよね。針のむしろってヤツ。でも、いいんだよ。あいりちゃんが望むのなら、俺はとことん付き合うから。
夏休みに入ってからこの三週間、俺は軍資金を調達するためにがんばった。ちょっと、いやかなりキツイ肉体労働系の単発バイトで集中して稼いだ。おかげであいりちゃんとは遊べなかったけど、そのぶん旅行中に大盤振る舞いしてあげるつもり。
そうそう、肝心の旅行先なんだけど。マリアさんが妊娠中ってことで、公共交通機関で遠くへ行くのは不安だから、車で行けるテーマパークに一泊二日することになった。みんなの憧れ、夢の国。宿泊プランを選んだり予約を取ったりって面倒事は、ぜんぶ駿河君がやってくれた。しかも運転までしてくれるんだって。ハンドルを握る駿河君はカッコイイに決まってる。俺も早く大人になりたい。
迎えの車を、遠野とふたり、自宅のアパートの前で待つ。学校に行くよりも早い時間だから、まだ空気が澄んでて涼しい。すでに日常じゃない気分。わくわくしてたら遠野に怒られた。
「そわそわしないでよ、うっとうしい」
「逆に遠野はどうしてそんなにテンション低いんだよ。荷物も少ないし。リュック一個ってどういうこと?女子力死んでるの?」
「……低血圧で朝が苦手なのよ。荷物の量は、ほうっておいて」
「そんな体質だったっけ?でも駿河君を見たら一発で目が覚めるよ。信じられないくらいイケメンだから」
「どうかしら。王子のおかげでイケメンに対する免疫力は上がってるのよ」
と、こんなにもクールだった遠野が、俺たちの前に停まったデカい外車から颯爽と現れた駿河君を見て呆気に取られてる様は、なかなかスカッとする光景だった。だから言ったのにね。と余裕でいられたのは、ほんの一瞬で。
「おはよー!ヤダ二人ともカワイイ!今日からよろしくねー」
助手席の窓から顔を出したとんでもない美人に度肝を抜かれた。巡り会えたことを神様に感謝するレベルの美人。
「お待たせ。荷物は預かるから乗って」
駿河君が開けてくれたドアの向こうには、いつもと違うポニーテールで少しオシャレをしたあいりちゃんがはにかんでいた。ここは天国か。ふらっと吸い寄せられてステップに足をかけたら、目の前にヌッと手が出てきた。
「待ちたまえ。君の席は俺の隣だ」
あまり光の入らない三列目のシートには、敵意むき出しでガン飛ばしてくるイケメンが俺を待ち構えていた。
ほんと、なんなの。百瀬家の顔面偏差値は異常。
待ちわびたよね、いろんな意味で。謎の組み合わせ、もとい、あいりちゃん親衛隊のみなさんと、楽しい旅行へいざ出発だ。
最初に提案されたときには、お腹を抱えて笑っちゃったよ。マリアさんと丈司さんと、まさか駿河君までが俺たちと一緒に旅行しようだなんて。俺からしてみれば、地獄絵図だよね。針のむしろってヤツ。でも、いいんだよ。あいりちゃんが望むのなら、俺はとことん付き合うから。
夏休みに入ってからこの三週間、俺は軍資金を調達するためにがんばった。ちょっと、いやかなりキツイ肉体労働系の単発バイトで集中して稼いだ。おかげであいりちゃんとは遊べなかったけど、そのぶん旅行中に大盤振る舞いしてあげるつもり。
そうそう、肝心の旅行先なんだけど。マリアさんが妊娠中ってことで、公共交通機関で遠くへ行くのは不安だから、車で行けるテーマパークに一泊二日することになった。みんなの憧れ、夢の国。宿泊プランを選んだり予約を取ったりって面倒事は、ぜんぶ駿河君がやってくれた。しかも運転までしてくれるんだって。ハンドルを握る駿河君はカッコイイに決まってる。俺も早く大人になりたい。
迎えの車を、遠野とふたり、自宅のアパートの前で待つ。学校に行くよりも早い時間だから、まだ空気が澄んでて涼しい。すでに日常じゃない気分。わくわくしてたら遠野に怒られた。
「そわそわしないでよ、うっとうしい」
「逆に遠野はどうしてそんなにテンション低いんだよ。荷物も少ないし。リュック一個ってどういうこと?女子力死んでるの?」
「……低血圧で朝が苦手なのよ。荷物の量は、ほうっておいて」
「そんな体質だったっけ?でも駿河君を見たら一発で目が覚めるよ。信じられないくらいイケメンだから」
「どうかしら。王子のおかげでイケメンに対する免疫力は上がってるのよ」
と、こんなにもクールだった遠野が、俺たちの前に停まったデカい外車から颯爽と現れた駿河君を見て呆気に取られてる様は、なかなかスカッとする光景だった。だから言ったのにね。と余裕でいられたのは、ほんの一瞬で。
「おはよー!ヤダ二人ともカワイイ!今日からよろしくねー」
助手席の窓から顔を出したとんでもない美人に度肝を抜かれた。巡り会えたことを神様に感謝するレベルの美人。
「お待たせ。荷物は預かるから乗って」
駿河君が開けてくれたドアの向こうには、いつもと違うポニーテールで少しオシャレをしたあいりちゃんがはにかんでいた。ここは天国か。ふらっと吸い寄せられてステップに足をかけたら、目の前にヌッと手が出てきた。
「待ちたまえ。君の席は俺の隣だ」
あまり光の入らない三列目のシートには、敵意むき出しでガン飛ばしてくるイケメンが俺を待ち構えていた。
ほんと、なんなの。百瀬家の顔面偏差値は異常。