ぼくたちは一生懸命な恋をしている
17.あいり
はじめての旅行は、とても楽しい。
隼くんは私の手を引いて、迷子にならないように気にかけてくれてる。円香ちゃんとマリアさんがとても仲良しになれたみたいで嬉しい。丈司お兄ちゃんと駿河くんは、私たちが楽しめるように、たくさんがんばってくれてる。
こんなにたくさんの人と夏休みを過ごすのも生まれてはじめて。昔は駿河くんと二人だったし、ここ数年はほとんど一人きりだった。今年はこれ以上ないくらい幸せな夏休み。だから、昔を懐かしんで切なくなるのはバチ当たりだ。
帰る前だと混み合うらしくて、二日目の今日はおみやげ屋さんから見て回ることになった。お店のなかは、どこを見てもふわふわのぬいぐるみやカラフルな小物にお菓子ばかりでわくわくする。
「みんな見たいものがあるだろうし、今から別行動にしましょ。三十分後に入口で待ち合わせね!」
マリアさんが真っ先に駆けていってしまって、丈司お兄ちゃんが慌てて追いかけていく。
「私たちも行きましょうか」
「そうだね」
みんなと別れて私は気になってたキーホルダーのコーナーへ向かった。マリアさんにもらったキーホルダーが便利で嬉しかったから、かなでのおみやげはこれにしようと決めてたんだ。たくさん種類があって、たくさん迷って、一番シンプルなアルファベットのモチーフを選んだ。よろこんでくれるといいな。
それから、旅行でお世話になってる大人のみんなにもお礼がしたくて、丈司お兄ちゃんとマリアさんには可愛いキャラクターが描かれた和柄の小皿を買った。駿河くんにも同じものを買おうと思ったんだけど、悩んで、駿河くんの好きなバームクーヘンに変えた。手元にずっと残るものをあげるのが、どうしても恐かった。駿河くんは優しいから、いらないと思ってもきっと使ってくれる。これ以上、負担になりたくない。
今回だって、すごく無理をさせてしまった。難しい予約とかお金の支払いとか、ぜんぶ駿河くんが一人でしてくれて。子どものお守りなんかで貴重なお休みを台無しにしたくなかったよね。こんな旅行を、きっと素敵な恋人としたかったよね。
ごめんね、駿河くん。
「あいりちゃん、どうしたの!?」
お店のなかで立ち尽くしてたら、隼くんに会った。
「そんな泣きそうな顔して、迷子になってた?一緒にいてあげられなくてごめんね」
隼くんが慌ててしまうくらい、私はひどい顔をしてたみたい。こんな楽しい場所で、ダメだな、私。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。隼くんはもうおみやげ買えた?」
「うん。あいりちゃんは?」
「買えたよ。たくさんあって、選ぶの楽しかった」
「そっか。じゃあさ、今からちょっとだけ、つきあってもらってもいい?」
なんだか隼くんが、いつもと違う雰囲気。つられて私もぎこちなくうなずいた。
隼くんは私の手を引いて、迷子にならないように気にかけてくれてる。円香ちゃんとマリアさんがとても仲良しになれたみたいで嬉しい。丈司お兄ちゃんと駿河くんは、私たちが楽しめるように、たくさんがんばってくれてる。
こんなにたくさんの人と夏休みを過ごすのも生まれてはじめて。昔は駿河くんと二人だったし、ここ数年はほとんど一人きりだった。今年はこれ以上ないくらい幸せな夏休み。だから、昔を懐かしんで切なくなるのはバチ当たりだ。
帰る前だと混み合うらしくて、二日目の今日はおみやげ屋さんから見て回ることになった。お店のなかは、どこを見てもふわふわのぬいぐるみやカラフルな小物にお菓子ばかりでわくわくする。
「みんな見たいものがあるだろうし、今から別行動にしましょ。三十分後に入口で待ち合わせね!」
マリアさんが真っ先に駆けていってしまって、丈司お兄ちゃんが慌てて追いかけていく。
「私たちも行きましょうか」
「そうだね」
みんなと別れて私は気になってたキーホルダーのコーナーへ向かった。マリアさんにもらったキーホルダーが便利で嬉しかったから、かなでのおみやげはこれにしようと決めてたんだ。たくさん種類があって、たくさん迷って、一番シンプルなアルファベットのモチーフを選んだ。よろこんでくれるといいな。
それから、旅行でお世話になってる大人のみんなにもお礼がしたくて、丈司お兄ちゃんとマリアさんには可愛いキャラクターが描かれた和柄の小皿を買った。駿河くんにも同じものを買おうと思ったんだけど、悩んで、駿河くんの好きなバームクーヘンに変えた。手元にずっと残るものをあげるのが、どうしても恐かった。駿河くんは優しいから、いらないと思ってもきっと使ってくれる。これ以上、負担になりたくない。
今回だって、すごく無理をさせてしまった。難しい予約とかお金の支払いとか、ぜんぶ駿河くんが一人でしてくれて。子どものお守りなんかで貴重なお休みを台無しにしたくなかったよね。こんな旅行を、きっと素敵な恋人としたかったよね。
ごめんね、駿河くん。
「あいりちゃん、どうしたの!?」
お店のなかで立ち尽くしてたら、隼くんに会った。
「そんな泣きそうな顔して、迷子になってた?一緒にいてあげられなくてごめんね」
隼くんが慌ててしまうくらい、私はひどい顔をしてたみたい。こんな楽しい場所で、ダメだな、私。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。隼くんはもうおみやげ買えた?」
「うん。あいりちゃんは?」
「買えたよ。たくさんあって、選ぶの楽しかった」
「そっか。じゃあさ、今からちょっとだけ、つきあってもらってもいい?」
なんだか隼くんが、いつもと違う雰囲気。つられて私もぎこちなくうなずいた。