ぼくたちは一生懸命な恋をしている
二人で両手いっぱいの荷物を抱えた帰り道。

「そのネックレス、可愛いね」

お天気の話をするみたいな調子で、駿河くんが言った。

「いつも大事につけてるよね」

心臓がキュッとする。駿河くんを怒らせたくなくて、隼くんの話は意識してしないようにしてたし、駿河くんもしてこなかった。でも、きっとこのネックレスが隼くんからのプレゼントだってことは、一緒に旅行した人ならみんな知ってる。

どうして突然そんなことを言うの?
触れたいのに、両手がふさがってて触れられない。不安になる。

「……できるだけ、身につけておきたくて」

「そんなに彼のことが好きなんだ?」

隼くん。
私の恋人。
私を好きだと言ってくれる人。

「うん。好きだよ」

少し声が震えてしまった気がする。
一瞬のような、永遠のような、一歩が重かった。

「はは、妬けちゃうなぁ」

駿河くんは、空を見上げて茶化したように笑った。

あぁ、やっぱり駿河くんは私のことなんて。

私も空を見上げる。あんなに晴れてたのに、いつのまにか雲が低くて、今にも泣きだしそうな空だった。
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