ぼくたちは一生懸命な恋をしている
店を出ると、低くて暗い空から雪が降っていた。予報の通りだ。モノクロの背景に、ようやくイルミネーションが輝き出して街を彩る。
にぎわう人波を避けてひとり、遠回りをして帰ると、あいりが夜食を用意して待っていた。今日も仕事だと勘違いしていたらしい。

「寒かったでしょ。お鍋にしたよ」

胸元で揺れている似合わないネックレス。
苦笑いすると、あいりはきょとんとした。
この不器用な妹の恋は、叶ってほしい。

温かい一人分の鍋をつついていたら、やっぱり少し涙が出た。
< 98 / 115 >

この作品をシェア

pagetop