ふたまた彼氏
それでもただ
嬉しいと思った。

似合うの一言で
こんなにも幸せになるなんて
思っても見なかった。


文化祭は
盛り上がり
夜は後夜祭が始まった。

キャンプファイヤーが
燃え上がる。

『美紅!!!』

「はーい!」

くるっと振り返ると
隆斗が立っていた。

『まわろーぜ?』

「美紅、行ってきなよ。」

にんまりと笑いながら
紗枝は手を振っている。

「でもっっ…。」

「ほら、行った行った。」

ぽんっと
あたしの背中を押して
また手を振った。

行こっ。
と隆斗は頬をあげ笑う。

後ろで何人かが
はやし立てる。

いつもは嫌な
後ろ指だって
なんだか少し優越感。

分かってるんだ。
隆斗には彼女が居ること。

隆斗が好きなのは
あたしじゃないこと。

ただ、仲の良いクラスメイト。
ただ、一番仲の良い女子。

ただ・・・
下の名前で呼び合うだけ。


だけどこの空間が。

チカチカ光るライト
きらびやかな屋台
賑わうグランド

甘い綿菓子
赤い林檎飴
弾くヨーヨー
光る打ち上げ花火

2人で歩くだけなのに
なぜか頬が緩む。

『なんか欲しいもんある?』

「チョコバナナ☆」

『向こうで待ってて?』

向こうの方を指さす。

「はーい。」
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