ふたまた彼氏
夏休みが近付いてきた。
今のあたしには
全然嬉しくない。
隆斗と離れてしまうから。
『夏休みか〜♪』
隆斗の声が遠くから聞こえる。
『彼女と遊びに行く
予定でいっぱいか?
ちくしょーめっ!!』
男子が隆斗に
ふとからかった。
『ちっげーバーカ。
今危険信号で
ヘコんでんの。
傷えぐんなアホッ!!』
ペシッと頭を叩く。
「えっ……。」
冗談じゃないと思うの。
見るからに辛そうだから。
「よかったじゃん美紅♪」
うん。
そう返事するけど
実際よくなかった。
だって隆斗のあんな顔
見たくなかったな。
好きな人の辛そうな顔って
涙が出そうになる。
あたしの力じゃ
どうにもできないから
よけい辛くなる。
彼女一人の存在だけで
笑ったり泣いたり
怒ったり出来るんだよね。
彼女って大きいって事
改めてわかった。