ふたまた彼氏
「ありえないっての。
どこからそんな
言葉が出てくるかね。」


あらあら。
とにんまりと
こちらを見る。

「美紅さっきから
顔緩みっぱなし。
頬も染めてさ。
よっぽど好き
なんじゃないの?」

そう言われて
ぱっと顔を隠す。

「春だねー・・・。」

「違うよ!!!」

好きなはずは
ないと思う。

昨日会った男に
恋するはずない。
顔はもちろん
好みだし、
なんだかんだ
優しいとも思う。

だけど好きではない。
好きだったとしても
認めたくはない。




『ちゃんと来たな。』

にししっと言う
効果音が似合いそうな
笑顔を浮かべている。

「うっ・・・
うん。」

紗枝にそう言われたら
そういう意識
持っちゃうじゃない。

ちゃんと顔が見れなく
なるじゃない。


きゅっと顔を
下に向けて
頬をなでた。

少し熱いみたい。

後ろで紗枝が小さく
頑張れと言った。

そんな気はないつもり。

好きじゃない。
好きだったとしても
認めたくはない。
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