あたいの運命
次々と叩きつけられる物音が鼓膜に響き、そして、わめく叔父。
恐怖する父の声、無音の母。
あたいは気が気ではなかった。
茶の間へと目線を向けた。
そのとき、窓の外から母の声がした。
「おいで、逃げるよ!」
まだ、叔父は暴れだしていない。
しかし、母も察していたのだ。
「今夜も危ない」ということを。

そして、とうとう叔父は暴れだした。
話によると父に掴みかかり、太い竹で殴りつけ
父の両手を血まみれにしたらしい。
あたい達は急いで廊下から出ると
玄関側にまわって駆けた。
次の瞬間、背筋に冷たい汗が流れた。
「カラン」
何かが落下した音。
出刃包丁だった。
包丁はあたいの右側を通過し落下したのだ。

心臓が止まるかとおもった。

いいや、そんな生易しいものではない。
心臓を鷲掴みされ、絞られるような思いだった。
どう見ても、あたいを狙った一投だ。
野生動物が一番弱い獲物を狙うやり方・・・
あたい達は夜になると人間じゃなくなる。
野生に退化する感覚があった。

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