あたいの運命
あの夜、叔母の家に連れられて
30分離れたHという街に来た。
Hはあたい達と同じ団地で住宅が広がり
団地の下はアパートが何棟も立っていた。

夜の夜中・・・車から降りたあたいは
夜の帳をみた。
黒いビロードにビーズをパッと散らしたような
そんな光景だった。
綺麗だった。
きがつくと涙が流れていた。
何であたい達ばっかり、こんな目に・・・
そう思わずには、いられなかった。

叔母の家に上がると
父達は治療してもらった。
手に刺さったトゲを1本ずつ抜くたびに
父が声を漏らした。
「痛い」
母はようやく落ち着いたのか
顔の緊張がほどけていた。
しかし、本人は気付かなかったのか
腕から流血していた。
どちらの腕だったかは忘れた。
しかし、赤いブラウスがベットリと
張り付いたように湿っていた。

あたい達はお風呂に入らせてもらい
用意された部屋で
床についた。
眠れるわけがない。
あの日の夜もまた、布団の中で声を殺して
泣いた。

叔父はあたい達のそんな屈辱を
知っているのだろうか?
どうせ、被害者は誰かなんて
考えたこともないだろう・・・
悪い夢を見たと思えたら、どんなに幸せだろう。
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