あたいの運命
あたいがナミの攻撃に悪戦苦闘しているときに
職場のチーフが言った。
「礼恩ちゃん、一人に執着しすぎてるのよ。
他の人と話してみれば？」
あたいは、その通りだと思った。
それから、少しずつ他の人とも話すようになり
ケンタロウさんを忘れる努力をした。
そんな或る日、またチーフが言った。
「コシムラさん？歳も近いし、彼女募集中よ。」
チーフから紹介を受け
あたいは、コシムラさんに話しかけるようになった。
籠りがちなあたいが彼の温かい言葉に心を開くようになった。
すごく。。。心が震えた。
孤独な日々に光が差してきた。
このままいけば、付き合えるかも。
相手の反応もマンザラではなかった。

しかし、事態は一転する。
ナミの魔の手が再び及んだ。
「単なる偶然よ。」
そう言った彼女はコシムラさんとベッドを共にし
恋をした、と言い出した。
そんな偶然はない。
第一、ケンタロウさんは、どうしたんだ？
あたいの中に真っ黒な憎悪が生まれた。
人はけして、誰かの物にもなれないけれど
この恋愛は、間違いなくあたいの物だった。
あたい達の噂は寮内にも広がり
寮生に娯楽を与えたようなものだった。
つまり、噂の的だった。
「次、九州から来たアノコは誰に惚れる？」
「ナミは誰と寝る？」
そんな所だった。

そんなとき、誰かが言った。

「もう一度、ケンタロウさんに言い寄ればいいのに。」
あたいもハッと我に返った。
「そんなこと、させるもんですか。」
チーフが言った。
「ナミがそんなこと許さないし、私だって面白くない。」

聞き違いではなく、チーフ自身の声だった。
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