黙れヘタレ

「私、1位じゃなきゃ
怖いんだよね…」

すみれは弱かった。
私のように。
隣で自転車を漕ぐすみれは
朝会の時の才能ある人の
凛々しさの欠片もなかった。

「私さ、人見知りだし
地味だし何も取り柄ないじゃない。
だから小テストで満点取って
表の一番上に載らないと
私の存在に気づいてくれないの」

その話は容易なのに
深刻だった。
「そんなことないよ」
なんて声をかけたかったけど
すみれが示す相手が誰かなんて
分かっていたから口にしなかった。

「私も取り柄なんかないしー」

私が行くところは
トリマーの専門学校。
大学受験は面倒だし
才能がない私が出来るのは
動物を触る事しか出来なかった。

「あるよ」

すみれに断言され
ちょっとドキッとする。

「咲って人見知りしないじゃん」

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