黙れヘタレ

しないわけじゃない。
でも人からそう言われると
ちょっと嬉しい。
その陰に高橋の存在があって
否定したかったけど
それじゃあすみれまで
否定しちゃうんじゃないかと
怖くなって言わなかった。
結局、慰めるのが苦手な
私は何もできない。

ゆっくりめに自転車を漕いでいたら
道路を挟んだ向こう側の
歩道に高橋と石井の姿があった。

「高橋、じゃあね!」

私は柄にも合わず
高橋に大きく手を振った。
高橋は一瞬ギョッとした顔をしたが
すみれを見て察したのか
素直に手を振り返した。

すみれが居なかったら
お前になんかに手を
振らねーよ。

< 105 / 120 >

この作品をシェア

pagetop