黙れヘタレ
「石井くん、バイバイ…!」
便乗したすみれが
叫ぶように言った。
「おう!お前、順位下がってたな!」
石井はからかうように笑う。
「いつか俺、お前を抜かせるかも」
上り坂に入り一気に
私たちと彼らの差が開く。
すみれは頬を赤らめて
彼の背中に向かって叫んだ。
「まっ…負けないから!!!」
立ち漕ぎする彼らは
スイスイと先に行く。
緊張しながら大声を出した
すみれは気疲れしたのか
自転車から降り、押し始める。
私もその後ろで同じ動作をした。
今回は石井に一本取られたかも。
凛とした容姿で自転車を押す
すみれを後ろから見て
そう思ってあげた。