黙れヘタレ

そんなことも知らずに
高橋はペンを机の上に
立てて並べている。
ああいうのって見てると
机を揺らして
倒したくなるよね。

私はすみれに
話しかけるふりをして
わざと腕を高橋の机にぶつけた。
ペンはボーリングのように
きれいに全部倒れた。

「あ、ごめん」

謝るが高橋はペンを
じっと見つめたまま黙っている。

「咲わざとやったよ」

棘を刺すようにすみれが言った。
空気読めよ、すみれを睨んだが、
すみれの口元は笑っていて、
さっきのことをまだ根に持って
いるのかと思った。

「わざとじゃないよ」

そう言ったが、
無駄だと分かっていた。


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