破壊の国のアリス
第一章 蒼き風に舞う薔薇

「白い薔薇と赤い薔薇…白ちゃんだったらどっちが好き?」


「は?」


唐突な質問に、白ちゃんこと兎 白蓮(ウサギ ハクレン)は自分でも驚くほど間抜けな声を出した。


「…急に何ですか?」


白蓮は大きな眼鏡を押し上げてやや離れた所で歩いているチェシャ猫を睨み付けた。

チェシャ猫は一瞬ビクッとなったがすぐに立ち止まり、白蓮の目を睨み返した。

白蓮とは違いチェシャ猫の口元には笑みが浮かんでいた。
白蓮は反射的に後退りしていた。


「酷いな〜後退りするなんて」


「その顔は怖いですよ、チェシャ猫」


「そう?笑ってるつもりなんだけど…」


「目が笑って無いです!!」

「…良いから答えてよ?」

チェシャ猫は一歩一歩白蓮に近づき、その肩に手を置いた。

顔を近づけて、まるで飢えた獣の様に目を細めた。


「…どちらかと言えば赤ですが…」


白蓮はチェシャ猫から顔を背けてボソッと呟くように言った。


「…ふーん…何か意外だな…白ちゃんは赤が好きなのか〜」


「どちらかと言えばですよ!」


「でも赤なんだ?やっぱりアリスの影響?」


チェシャ猫の質問に少し考える仕草をしてから


「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれないですが…今のところはどちらとも言い切れないです」

「ふーん」


チェシャ猫は気の無い返事でもう違う方向を見つめている。


「それより…貴方は白と赤どちらがお好きなんですか?」


「俺?俺は当然赤だよ」


「赤ですか、それもアリスの影響で?」

「だろうね」


「即答ですか」


「だって俺はアリス色に染まってるんだから仕方無いだろ(笑)」


チェシャ猫はニッコリと笑って言った。

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