青蝶夢 *Ⅱ*
「それをね、ヨシノったらね
 早くしろっ、いい加減にしろ
 って煩くて、じっくり商品を
 眺めてる時間も無くて
 こんな事なら、一人で・・」

芳野に対する愚痴を、話続ける
茅野さんの言葉を頷きながら
一生懸命に聞いてあげている
優しい伊吹。

私は、伊吹の隣に立ちながら
芳野と街を歩ける彼女を
羨ましいと思うのだった。

そんな私の背に、いつの間にか
立つ芳野は、私の肩を叩いた。

そして、振り返る私に
貴方は小さな声で言う。

「ごめんな
 ・・・(連絡)できなくて」

私は、小さく首を左右に振り
芳野と同じぐらいの声で答えた

「いいよ
 待ってるから」

貴方の手が、一瞬だけ
私の手に触れた。

熱くなる胸・・・
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