青蝶夢 *Ⅱ*
一台のタクシーが停車する。

黒髪を掻き揚げながら
車の横に、貴方は
降り立つ。

貴方の姿を見つけた私。

急いで貴方の元へ駆ける。

そして、貴方は抱きつく
私を、その広い胸に
抱き留めてくれた。

貴方の声

私の耳元で優しく響き

私の胸を震わせる。

「お前が望むなら
 
 俺が連れ去ってやる

 もう、二度と離さない」

私の頬に手を翳し、私を
至近距離で見つめる芳野。

「何かあったのか?」

ポタポタと私の瞳から
零れ落ちる涙に、貴方の
指先が触れる。
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