青蝶夢 *Ⅱ*
そこに居たのは、母親だけで
娘の姿は無かった。

「どうして、ここに居るの?
 アイは?」

タクシーから降り立つ芳野は
母に深く頭を下げた。

「ご無沙汰しています」

「フルヤさん・・・ヒイロ
 これは、どういうことなの?
 あなた達・・・」

「ママ
 こうなった経緯を話すと
 とても長くなるの・・・
 
 今は、話をしてる時間が無い
 詳しい話は、また・・・
 
 ところで、アイは
 どこに居るの?」

「アイなら、イブキさんが
 戻って来て・・・」

母の言葉に、私の胸は苦しい。

「イブキ、帰ってるの?」

「ええ、ついさっきね
 
 仕事が早くに
 片付いたとかで・・・」

イブキが居る。

あのドアの向こうに・・・
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