青蝶夢 *Ⅱ*
『ここにしようか?』

『・・・・・・』

私は、言葉にならない。

だって、そこには
壊されたはずの思い出と
よく似た風景が広がる。

庭先は、雑草ばかりで
お花なんて一つも咲いて
いないけれど、確かに
似ている。

そう、伊吹の祖父の家に
外観がとても似ている
素敵な家が建っている。

そう、あそこ、あの場所に
ブルーエルフィンの花を
植えれば、初めて見た
あの日の風景と重なる。

息を飲むほどに

美しかった世界・・・

青い蝶・・・

『やっと、見つけたんだ
 探したんだぜ
 どう、気に入った?』

返事も忘れて、私は見つめる。
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