青蝶夢 *Ⅱ*
ソファーの前に立つ、エプロン
をした秘色は、芳野を見下ろす

『ヨシノ、昨日、確か
 禁煙するって言ったよね?』

『あれっ、そうだっけ?』

『はい、没収
 先生に渡しなさい』

秘色は、手の平を上に向けて
芳野の前に出す。

『先生、渡すからさぁ
 代わりに何かちょうだい?』

芳野は、秘色の手の平の上に
煙草を置いた、その手を秘色が
掴み、屈んで手首にキスをした

『それだけ?』

『それだけ』

芳野は、煙草の箱ごと、秘色の
手を握り締めて引き寄せると
彼女は、ソファーの横に
ゆっくりと膝をつく

その唇に芳野は口づけた。

甘い、口づけ・・・

甘い、ひと時・・・

すると、キッチンから

ピーピーピーと音がする。
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