青蝶夢 *Ⅱ*
「アイ
 手、離しちゃ駄目よ」

「はあ~い」

藍は、両手でしっかり
鎖を持って、ブランコに乗り
揺られている。

「ヨシノ、お帰りなさい
 よく、ここが分かったわね」

「ああ、ただいま
 この公園にいなかったら
 家で待ってるつもりだった
 どう、気分悪くないか?」

「大丈夫よ」

お腹に手をあてる秘色。
 
「ハナ、パパの所においで」

芳野との間にできた、最初の子
を流産してから、長い月日を
得て、私はやっと愛する人の
子供を身籠ることができ

そしてこの手に抱く事ができた

病室で、産まれたばかりの
この子を抱く、芳野の瞳から
一粒の、きれいな涙が流れた事
を、つい最近のように、鮮明に
私は思い出す事ができる。
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