青蝶夢 *Ⅱ*
この場所で、こんな風に
安らかな時を過ごせた事が
あっただろうか?

こんなにも心穏やかな気持ちで
眠れた事があっただろうか・・

暗い部屋に

一筋の光・・・

久しぶりに逢った芳野と伊吹は
何を話すでもなく、酒を
酌み交わす。

「髪、切ったのか?
 
 昔のようだ」

「ああ、長い髪は厭きた
 この髪も中途半端で
 もう少し切ろうと思う」

そう言って、髪を触る芳野の
動作に、伊吹はドキッとする。

伊吹は、その気持ちを
酒を飲んで忘れる。

「じゃあ、もっと昔に戻るな」
< 32 / 334 >

この作品をシェア

pagetop