青蝶夢 *Ⅱ*
「いや、俺は本気だ」

「お前の世話にはならねえよ
 
 頭のお堅い上司のいる
 設計事務所で働くなんて
 ごめんだ
 もう懲り懲り」

「俺が上司なら
 どうだ、文句ないだろう?」

「お前が上司って
 お前、まさか・・」

伊吹は、頷く。

「ああ、ちょっと前に
 会社を辞めた
 そして、つい最近
 先輩と設計事務所を開業した
 
 本当は、もうずっと前から
 誘われてはいたんだが
 カヤノとの結婚を前に、この
 不況の中、企業を離れる事は
 俺には、どうしても
 できなかった
 
 だけど、婚約解消を機に
 挑戦する事にしたんだ
 
 どうだ、お前もそこで
 働いてみないか? 
 そして、一級建築士の資格を
 取ればいい」

伊吹の言葉に、芳野の頭は
混乱する。
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