青蝶夢 *Ⅱ*
肩を落とす、秘色の後姿を
見つめて、伊吹の表情が曇る。

そして、眉間にシワを寄せて
物事を考えていた伊吹がつい
ため息交じりに、ボソっと
呟いてしまう。

「本当に、これで・・・」

秘色の母は、微かに聞こえた
その言葉が気になるが
もう、何も聞かない。

「イブキさん
 
 中へどうぞ・・・」

「ありがとうございます」

部屋のドアが閉まると私は
泣く事を我慢できなくなる。

流れ出して止まらない涙。

ヒック、ヒック・・・

芳野が迎えに来てくれない
事実が、辛くて堪らない。

私の胸を凍らせていく・・・
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