青蝶夢 *Ⅱ*
「彼女が俺に貢いだ金の事を
 思えば、この足一本ぐらい
 くれてやっても構わない
 
 俺は、彼女を信じている
 心配してくれてありがとう」

ありがとう・・・

芳野の言葉が胸に響く。

「これ、うまいな
 久しぶりに食べたけど
 お前、料理の腕
 上げたんじゃねぇの
 
 うまい」

食卓に並べた夕食は
どれも、これも
貴方が好きだった物ばかり・・

「それから、大事な話を
 もう、ひとつ
 
 ヨシノが怪我をする前に
 俺はヨシノに一緒に働かないか
 と声をかけていたんだ
 
 その頃、先輩と俺とで開業
 したばかりの設計事務所に
 ヨシノを誘って、了解を
 得た矢先に、この事件が
 起って・・・
 
 ヨシノは一旦は、俺達に
 迷惑がかかるといけないと
 事務所で働く事を断わって
 来たけど、俺が止めた」

「働き出して、まだ4ヶ月
 ぐらいかぁ?
 いつ、やめるかもしれない
 状態だから、お前には
 話していなかっただけだ」

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