青蝶夢 *Ⅱ*
帰る前に、お手洗いを借りた
私は洗面所で手を洗う。

コップに女性の歯ブラシが
あった。

私が使っていた色と
同じピンク色。

『女も居るし・・・』

この場所に置いて出た
私の荷物は、何も無い。

きっと、芳野が
処分したのだろう。

悲しい現実・・・

伊吹と二人
タクシーに揺られる。

「ヒイロ、ごめん

 幾ら、ヨシノに
 口止めされていたからと
 お前が、アイツに
 逢いたがってる事を
 知っていて

 俺は、ずっと
 黙っていた」

苦しい貴方の胸の内
私には分かるよ。

「もう、いいよ
 昔のことだもの」

「ごめん」

私の肩に、頭を置く
伊吹の髪に私は触れる。
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