一途なｵﾘｵﾝ座

戸惑い

　中学校生活にも慣れてきた５月終盤。私は珍しく１人で次の授業準備をしていた。　　　今日は落ち着いた気分だ。風に揺れる草木の音と優しくふりそそぐ陽の光。　
そんな音をかき消すように、授業を終えた生徒たちの笑い声があちこちに響く。
いつもなら私もその中に加わり、皆と屈託なく笑い合う。
そんな風景を想像しながら、私はふと机に顔を伏せた。

　私はもともと、そんなに大人しいような性格ではない。どちらかといえば、たくさんの友達と騒いでいつも明るくふるまう。女の友達よりも男の子と話すときの方が多いし、一緒にわいわいと騒ぐこともある。
まわりからすれば、私は比較的話しやすい方なのだという。
そういう性格だからだろうか。期待よりも不安の方が大きかった入学当初とは裏腹に、自分が思っていたよりもきクラスに打ち解ける事が出来た。　
今は特に悩みなく毎日を気楽に過ごしている。そんな日々が続くはずだったのに・・・　　

　ふと顔を上げると、次の授業はもうう間近にせまっていた。休憩時間も残り少ない。気分も憂鬱になり、私は小さくため息をついた。

「相咲！」
　突然の呼びかけと同時にいつもの顔が私の目の前に現れた。

「びっくりしたぁ・・」　

「そんくらいで驚くなよ！」

「ふつうびっくりするって！！」

「いや・・お前だけだからっ！」

「ひっどぉっ」
　
　話しかけてきたのはいつも一緒に話す仲のいい男友達だった。
”希”（のぞみ）という名前に合った明るい性格で。皆からの評判も良く、学年のアイドル的存在だ。

「何？お前が１人なんて珍しいじゃん！」

「そぉ？」
　
「うん。かなり珍しい。ってか変。」

「はぁ！？」

　希はいつもと変わらなかった。いつもみたいにからかって。バカみたいに笑って。ただひとつ違っていたのが、まわりの雰囲気だった。
希以外の男の子は、私を見ては視線をそらすの繰り返し。なにかがおかしい・・・
彼らの視線は間違いなく私に向けられてて。当の私は、心当たりなんて何一つ無い。