◆あたしの砂時計◆
★ 戻った時間
見慣れた風景の見慣れた街。
だけど、なぜか違和感を感じる。
耳元が少し涼しい感じがしたから、何の気も無く髪を撫でてみた。
……ウソッ!!
この三年間、頑張って伸ばした髪が切られている!?
でも、髪切魔なんて人には会わなかったよね?
『あんたの想う世界に着いたら、時計の上の針を5回まわすんだ……』
それじゃ、此処は、あたしの……一番想っていた世界って事?
確かめるように今、着ている筈の制服に視線を落とす。
グレーのブレザーにワイン色のリボン、紺色のスカートの制服だったのが、紺と言うより黒っぽい色一色の何の飾り気の無い、肩から吊り下げられたスカートを着ている。
ダサッ。
でも、これが今のあたしの現実……。
そうだ、ネジ回さなくちゃ。
針は、まだネジを触っていないのに動いている。
あのお婆さんの言う事、本当なんだ。
……信じられない。
タイムスリップなんて、アニメやドラマだけの話とか思っていたし。
それなら、アイツに会えるのかな?
ううん。会う資格はないよ。
でも、この格好って事は──
頭はまだ整理がつかない。けど、足だけは記憶している道を迷うことなく突き進んでいる。
「おはよぅ」
やっぱり、この教室なんだ。
「あれぇ、香穂早いね」
えっと、誰だっけ?
あたしは、さっきこの世界に来たばかりなの。何の復習もしてこなかったんだもん、あんたの事なんか覚えてないよ。
「今日テストでしょ?」
「げぇ、忘れてたよ!!」
あら、そうなの? あたしの頭さん、記憶力凄いじゃない。
高校の問題を解いているあたしには楽勝よね?
「ノート、見せてぇ」
「はい、あたしの山勘中るよ」
そういえば、ノートは纏めるの得意だったっけね。
今時、こんな学生カバンを使う学校って、古臭かったんだね。
当時は感じなかった事が、今ならハッキリと指摘出来る。
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