◆あたしの砂時計◆

「あ、あのさ、大野君修学旅行の班、一緒に行かない? あたしと水沢さんと、栗田君と大野君で」

「お、いいね。楽しそうじゃん」

「ありがとう」

 信じられない。
 こんなに、アッサリ話交わせてたんだ……。

 トイレを口実に出て行った里佳が教室のドアから顔だけをコッソリ覗かせているのが目に入った。

 あたしは、彼女に向かって小さくピースを送った。

 ってか、こんなにも簡単な事、あたしは今まで悩んでたって事?
 アホらしっ。

 自分のバカさ加減に呆れてしまう。

 でも、三年前は必死だったんだから。

 今はそんなのが嘘みたいに、普通に話せている。

 ちょっとした勇気で、こんなにも変われたんだね。

 多分、一クラスメイトとして話しているだけだよね?

 それでも、会話が出来るだけで、嬉しさで心臓が踊り出しそう。

 この世界でしか伝えられないかもしれない。

 それなら、おもいっきり楽しむしかないよね。

 私の知らない、新しい時が、16ビートで打ち鳴らしはじめた。


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