◆あたしの砂時計◆

★ 新しい時間


 準備の時から、あたしら4人は一緒に行動する事が多くなった。

 あたしが経験した修学旅行は、殆ど記憶にすら残っていない。

 写真があるから、行った場所はなんとなく覚えているだけ。

 今は違う。

 班別行動の移動手段は、タクシーを使ったんだ。

 他の人たちに邪魔されないし、運転手さんも京都を楽しく教えてくれたの。

 太秦の映画村でみんなで仮装しているの。

 あたしと里佳は、お姫様。良一くんはお殿様、栗田くんは何故かお供の忍者。

 他の学校の人逹に、あたしら役者に見られたのかな? いっぱい写真をせがまれちゃった。

 冗談を飛ばしあって、笑いあって、こんなにもドキドキで、嬉しい記憶なら絶対に忘れないよ。

 あたしは、何処で間違えたんだろうな。

 現実の世界に戻ったら、また、すれ違ったままに戻っちゃうのかな?

 そんなの嫌だな。

 此処が、パラレルワールドだって事は分かるけど、今、この楽しい時が幻になるなんて

 ……考えたくないよ。


「どうした? 元気ないじゃん」

「ううん、なんでもない」

「ならいいけど、疲れたらちゃんと言えよ」

「うん」

 そっと繋いでくれた掌から伝わる温もり。

 そんなに優しくしないでよ。
 あたしは、いつか、……自分の時間に帰るんだから。

 ずっと話すらすることが出来なくて、好きなのに伝えられなくて、後悔し続けていた上に退屈な毎日の繰り返しだった。

 だから、伝える為にやってきたんだもの。

 ちゃんと言わなきゃ、今度は、この世界で後悔するね。
 どうやって、きり出したらいいんだろう? 

 飴なんか舐めない方が良かったのかな?

 今は、考えるの一時的に辞めておこう。

 この時間がいつまで続くのか、あたしには分からない。

 あたしは、今を大切にするよ。


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