◆あたしの砂時計◆

 毎日が楽しくて、ずっと、ずっと、この世界のまま終わればいいのに。

 段々と欲望も大きくなってきた。

 けれど、あたしが此処にいられるのも時間の問題。

 だって、刻みだした懐中時計は、最近変な動きをするの。

 針が10分進んだと思ったら、一時間前の時刻を差している事があるし。

 文字盤が消えたりもする。

 此処に来た時は、規則正しく動いてたもの。

 これって、タイムリミットが近づいているって事よね。……きっと。


『君は、話が出来たら、それで満足?』

 誰?

 誰もいない教室。

  コチッ、コチッ、コチッ……。

 規則正しい壁にかけられた丸い時計が音を鳴らしているだけ。


『大切な想い、伝えないと。帰ることも出来ず、今度はこの時間で後悔するよ』

 幻聴?

 誰の姿もない。今、この教室には、あたし一人。


『ボクは、時のヤジロベエ』

 もしかして、この時計?

 そういえば、懐中時計に聞けとかなんとか言われたっけね。


『時間がないんだ。君は今、選ばなければいけない。伝えるの? 伝えないの?』

 伝えたい。
 でも、何を言ったらいいのか分からないよ。

 伝えたら、今日までの時間はどうなっちゃうの?


『君に、最後のチャンスをあげるよ。大丈夫、記憶は消えないよ。さぁ、勇気をだして』


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