【完】トリプルスレット
「蒼、もう夕ご飯だし帰らない?」
私は蒼を抱っこしながら、聞いた。
「ヤダッ!まだ帰らないっ!もっと練習しないと、父ちゃんに勝てないもん」
蒼は体をよじらせて私の腕から抜けると、下に落ちていたボールを拾い上げ、またドリブルをつき始めた。
そんな蒼の必死な姿を見て、がむしゃらに光明に挑んでいた自分を思い出す。
「もう…そっくりなんだから」
ここのリングはまだまだ蒼には高くて、ボールがリングに当たらずに落ちてくる。
それなのに蒼はそれを拾って、何度も何度もシュートを繰り返す。
届かない場所に必死に食らいついているその姿に、私は幸せが溢れてくる。