黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅰ
和風の大きな屋敷の奧に、親父のいる大広間がある。
組長だけが使うことを許された部屋。
そこに、私は向かう。
大広間に近づくにつれ、緊張が増してきた。
「すでに親父っさんはいらっしゃいます。
どうぞ、お入りください、若」
「………サンキュ」
目の前の大きな襖をあければ、この三年間恨んできた親父がいるんだ…。
意を決して、襖を開けた。
ドクン…――ッ
「三年ぶり……、いや、こうして会うのも、四年ぶりくらいだな…、月乃」
三年前より、少ししわの増えた親父の顔。
親父とこうして会って話すのは、家出する一年くらい前からなかった。
親父の前に置いてある座布団に座る。
「なに、呼び出して」
「本当のことを、話すためだ」
「本当のことって何。
親父は、母さんと修亮を捨てた。
それが全てだろ?」
「違う。
香月と修亮を捨てたつもりはない」
「捨てたのと変わりはねえだろ?!」
声を荒げてしまった。
私の声は、たぶん屋敷中に響き渡っただろう。
つもりはない、って何?!
捨てたのと同然だろ!?