恋に落ちて
「えー、じゃあ自己紹介を」
「……………」
「…、……キトウリョウタ君でーす。漢字はこうな」
無言のキトウ君に察した先生が紹介し、黒板に名前を書く。
鬼藤凌太君、か。
「じゃあなんか質問は――「おい、俺の席何処だ」…え?あぁ、そこだ」
先生が指を指したのは、私の隣の空いた席。
まさかとは予想していたが、やはりか。
鬼藤君は無言で怠そうに席まで歩く。
私はついじっと見てしまっていたらしい。
ばちっと目が合い、数秒見つめ合いという名の睨み合いが続く。
我に返り慌てて目を逸らすと、彼は大きな音を立てて不機嫌そうに席に着いた。
それからも多々隣から視線を感じたけれど、きっと気のせいだ。うん、そう思い込もう。