恋に落ちて
「赤城さん」
それからというものの、私の頭の中は直樹が占領していた。
これを、一目惚れというのだろうか。
惚れてしまったのだ。
彼の出す紅に。
大勢の伸びた男の中、一人佇む姿に。
不思議な色の瞳に。
静かな微笑みに。
つまり、私は彼に恋している。
これは紛れもない事実だった。
会いたい。話したい。笑い合いたい。
図々しいけども、隣に居られたら。
こんなにも恋い焦がれる日々を過ごし、早一ヶ月。
現実は甘くなかった。
あれから一切、彼に会うどころか目にしていない。
どうしたら会えるのだろう。
そもそもまた会ったとして、彼は普通に接してくれるのだろうか。
『君、大丈夫?絡まれたりしなかった?』
お巡りさんの言葉を思い出す。
黒い髪を一つに結い、膝下スカートに黒縁眼鏡。
こんな容姿で彼と居ては絡まれていると思われるだろう。
どうしたらいい?